「アテネでの目標は前回(シドニーはベスト8)以上」。山本監督は上を見据えて、しっかりとチームを作ってきた。昨日の試合も、ベースは基本的に変わらない。ボランチに鈴木と今野を置いて、平山の高さやキープを軸に田中がドリブルをする。DFはケガ等で急造3バックだったが、本番でもなにがあるかわからないので、いい機会だったと思し、予選と同じようにやることは決まっていた。
山本監督は、コーチ歴も長くオリンピックも今回で3度目である。選手からの信頼も厚く、日本でU-23をこれ以上に指揮できる人はいない。だから、いまなにをしなくてはいけないのか、よく分かっている。競争意識を明確にして、けが人が出ても控えの選手には「それがチャンスだ」と全員にチャンスを与え、緊張を解(ほど)かせない。メダルを狙うには、アテネ開幕までこの緊張感を保たないといけない。だから、OAも「必ず使うとも使わない」とも言っていない。
しかし、昨日の試合である場面が気になった。それが、山本監督のベンチを飛び出しての徹底的な指示攻撃ともいえるほどの指揮ぶり。監督なのだから、指示を出すのは当たり前だが、あそこまでやるとは…。観客がほとんどいないスタジアムでは、マイクを通して遠くはなれた日本にいる私たちのところまで、その指示は聞こえていた。石川に「(一対一で)勝負しろ!」、「(ボール運びを)シンプルに!」…。選手たちにも聞こえていただろうし、それを実践していたかもしれない。しかし、本番ではきっとあのスタジアムは日本のサポーターも加わって満員になり、応援や歓声で間違いなく聞こえないだろう。久々の実戦で指示を出したかったのもわかるが、あれは本番では通用しない。
まだまだ、チームとして試したい段階かも知れないが、山本監督のやるサッカーは選手たちにしっかりと伝わっているだけに、そろそろ選手個々人の判断やピッチに出ている選手だけで考えさせるのも、チームとして成長できるのではないか。本番でゲームをするのは、選手たち。ベスト8以上を目指すなら、これからの一試合一試合、本番のつもりで戦っていこう。8月まで合宿が組めるのなら、何の問題もないが。